2012年10月15日月曜日

ヘレンドのティーカップ②

先日ご紹介したヘレンドのティーセットを見ていて、ふと久々に陶磁器絵付けの先生を訪ねたくなりました。

大昔は手描きしかありませんでしたが、産業革命から工業化が進むに連れて量産が
もてはやされ、その後、 手描きが高級・特別となりました。しかし、今はその手描きの
職人さんが居なくなり、手作りの価値感の前に”手作り”の存在が消えようとしています。














ヨーロッパのある有名陶磁器会社も量産・工業化が進むことで品質が落ち、
品質の信頼性が失われ、職人も育たずに潰れかけたときに自社の原点である
”独自の技術”(手作り)に切り替えて、ブランド力を戻したそうです。
どの業界も、職人の存続と再生は無くなるか、ギリギリ救われるか、明暗を分ける時代に感じます。


知り合いの先生は80歳になられます。
日本の陶磁器輸出の全盛期を経験し、シールで柄を付ける転写技術が主流になり、
外国製品が主流になった今に至るまで、陶磁器生産の歴史を知る職人さんです。

今や需要も少なく衰退した手描き技術ですが、体が動くかぎり学びたい人に継承していくと
おっしゃっています。こちらでは国家試験用に特訓もして頂けるということで、
遠方から新幹線で通われる方も居るほどです。

ただ、技術の継承は不思議なもので、どんなに丁寧で器用な人でも『気』だけは環境によるもの
のようで、大きな壷の絵を描くには窯の怖さを知らないと出来が上達しないそうです。
窯の怖さとは、手塩にかけた陶磁器が窯の中で割れる、他の人の作品も壊してしまう・・・
そんな、現場の緊張感のことです。

今は、恐い親方も先輩もおらず、窯も電気で安定しているせいか、
絵の上手い下手を超える『気』を集めるのは難しい様です。
ただ、時代は変わり、求められる形も変わってきます。
それに合った事をするのも、生き残る方法です。
男達の力仕事であった陶磁器技術は、今、創造性を生かした優雅な技術として女性に人気です。
デザインも女性が考える形の方が人気になっています。
次世代は気迫で作るのではなく、優しく繊細な造形が愛されるのだと思います。


絵画 骨董品 買取の北岡技芳堂

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